声明

2020年11月7日

学術会議任命拒否に抗議する声明

NPO法人日野・市民自治研究所理事会

 

 10月1日、菅義偉内閣総理大臣は、日本学術会議(以下、「学術会議」という)の新任の会員の任命について、学術会議が105名を推薦したにもかかわらず、そのうちの6名について任命を拒否しました。

 NPO法人日野・市民自治研究所は、憲法を体系的に学び活動する多くの市民のため学習と研究の場を提供し共に学び発表する団体として、この声明を発表します。

 

 「学術会議」は、戦前に科学者が弾圧され、日本の科学が戦争に利用され、戦争を推進する役割を果たしてしまったという痛切な経験を経て、日本学術会議法により、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として1949年に設立されました。わが国の科学者の「内外に対する代表機関」(日本学術会議法2条)であり、「日本の科学者の国会」と言われています。その精神は「科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学会と提携して学術の進歩に寄与することを使命」(同法前文)としています。

 「学術会議」は第1部(人文科学を中心とする科学分野)、第2部(生命科学を中心とする科学分野)、第3部(理学及び工学を中心とする科学分野)に分かれていますが、第1部に属する会員は70名で今回改選の35名のうち6名が会員に任命されませんでした。安保法制や共謀罪に反対する意見を表明し、「安保法制に反対する学者の会」に所属する人や、多くの市民の学習会などで講師を数多く務め安保法制や共謀罪などの問題点を指摘してきた方々が含まれています。

 「学術会議」はその職務を独立して行うと法で明記され(同法3条)、科学の振興及び技術の発達に関する方策、科学に関する研究成果の活用に関する方策などについて、政府に勧告することができるとされています(同法5条)。

 日本国憲法は文化的諸活動の自由は基本的人権として万人に対して保障しています。「『文化的創造は本来国家的なものでなく、個人の創意と社会的環境の所産であり、従ってそれは強度の自主性を要求する』として田中耕太郎は『文化の非国家性又は自主性』と名付け、この原則は、『文化国家』を論ずる場合の基点となる」と言われています(新版体系憲法辞典48頁r)。

 文化を築き上げている科学者の代表である「学術会議」には当然のこととしてその自主性が保障されていなければなりません。

 現在の「学術会議」からの推薦で会員を決める制度は1983年の法改正で定められました。法改正で「推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する」(同法7条2項)とされていることが組織の独立性、「学問の自由」の侵害とならないか問題となりました。当時の中曽根首相以下政府関係者は「任命は形式的なものであり、従来の『学術会議』で決定する運用と異なることはない」と明言しています。

 内閣法制局の法案審議録においても「指揮監督権をもっていないと考える」と回答しています。このように国会で明確に組織の独立性が争点となり、繰り返し説明した解釈を「総合的・俯瞰的活動を確保する観点」などという全く具体的でない抽象的な説明で恣意的な法適用を行うこと自体内閣による新たな法の制定であり、三権分立に違反した立憲主義の破壊であると考えます。

 「推薦された者を任命する」という制度は「学術会議」の政府からの独立性を保つために不可欠の制度です。日本学術会議法は「すぐれた研究又は業績がある科学者」のうちから推薦すると定めています。法令で定めた基準があるにもかかわらず、意味不明な言葉を持ち出して菅義偉総理大臣は推薦された学者を「拒否」しました。内閣総理大臣には「すぐれた研究又は業績がある科学者」を判断する権限はなく、法は行政にそのような権限は与えていません。違法な処分であると考えます。

 

 菅総理大臣は、「憲法15条の公務員の選定罷免権は国民固有の権利であり、国民主権のもと、国会を基盤に選出された内閣総理大臣が国民の意思を体現して会員の任免権を持つ」などとも述べました。

 憲法の立憲主義は権力を縛るものであり、政治権力を抑制するものです。国民主権のもと、国民固有の権利である選定罷免権を総理大臣に与えるなどということはあり得ません。菅総理大臣は憲法15条の理解も立憲主義自体の理解も間違っていると考えざるをえません。

 「学術会議」からの推薦に対し内閣総理大臣が何らかの判断をして任命を拒否すること自体が違法と考えます。

 菅義偉総理大臣の任命拒否は「学術会議」への明かな干渉であり、学問の自由への侵害、文化の国家管理への道筋であり断固抗議し、「任命拒否」を撤回することを求めます。

 
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